小さな会社が競争に勝つためのビジネスDNA
ビジネスの成功の鍵は「差別化」にあります。その核となるのが、ビジネスの「DNA」、すなわち「ミッション」です。
これは、企業の持続的な存在意義や方向性を示すもので、時代や環境の変化に対応しつつも、その本質は変わらないものとして次世代に受け継がれていくものです。
そのミッションの中心には「顧客のニーズ」が位置しており、特に小規模な企業においては、独自のユニークなニーズを見つけ出すことで、競合との明確な差別化を実現できます。
つまり、ビジネスDNAは、顧客ニーズをその中心に据えたミッションと言えます。
ミッションがないと顧客ニーズという「源泉」から「温泉」を上手く汲み出せません。この場合、温泉とは企業利益のことですが、それを汲み出すには仕組みが必要です。
そして、このニーズの探求と分析には「SWOT分析」が有効です。
具体的には次のようなものです。
- Strengths(強み)
ビジネスが持つ独自の利点や特性 - Weaknesses(弱み)
改善や対策が必要な部分 - Opportunities(機会)
市場や環境からの成長の可能性 - Threats(脅威)
競合や外部環境の変化によるリスク
詳しくは、こちらをご覧ください。
SWOT分析により、特に「機会」を活用して、新しいビジネスの可能性や成長の方向性を見つけることができます。
次に様々な成功している企業のSWOT分析例で見つけたビジネスの「DNA」をご紹介します。
ビジネスのDNAを理解し、その上で顧客の真のニーズを捉えることができれば、スモールスタートでも 大きく業績を飛ばすことができます。
「ビジネスのDNA、SWOTで見つける。」
ビジネスのDNAを探求し、SWOTで差別化戦略を導く。ミッションを策定し、小さなビジネスの未来をデザインする。
SWOTシンクタンクで見つける、差別化に役立つ分析例
小さなビジネスであっても、しっかりとしたSWOT分析を行い、その結果を元に戦略を練ることで、大手企業にも劣らない差別化を図ることが可能です。本記事では、具体的な企業の分析例を通じて、その方法を明らかにします。
IKEAのSWOT分析の例
IKEAは北欧(スウェーデン)の企業ながら日本市場で成功しており、これには独自の戦略があります。どうしてIKEAは日本で成長できたのか、SWOT分析で考察してみました。あくまでも例としてご参考にしてください。
内部環境分析
強み
- IKEAの家具はDIY(自組み立て式)で、物流や在庫のコストを低減できる。
- DIYにより、消費者にはリーズナブルな価格での購入が可能となる。
- 自社オンラインストアを持っており、消費者は簡単に製品を購入できる。
弱み
- グローバル企業のため製品規格が日本にあっていない。
- アジアでのシェアが少ない。
- 一度日本市場への参入に失敗している。
外部環境分析
- 北欧デザインやライフスタイルへの関心が高まっている。
- 通販の普及により、家具をオンラインで購入することが一般的になった。
脅威
- 日本ではDIYに抵抗を感じる人もおり、IKEA製品の購入にハードルがある。
- 日本の住宅は世界と比較すると狭く、大型家具を買いにくい。
- 既にニトリなどの有名な家具メーカーが存在する。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
IKEAのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- 北欧デザインの魅力を活かす
市場で高まる北欧デザインへの関心(機会)に応え、色のバリエーション豊かでコストパフォーマンスの高いインテリアを提供する。 - オンラインストアの活用
家具のオンライン購入の増加をチャンス(機会)としてとらえ、自社のオンラインプラットフォームを強化。これにより、消費者の購買意欲を高める。
強み×脅威(差別化戦略)
- ライフスタイルの提案
- ベッドルームなどを中心に、個々の消費者の視点からの商品展開やライフスタイルの提案を行う。
- 家具を「ライフステージに応じて変わるもの」と提案する。そのうえで、DIY式家具を販売することで、格安での購入を促す。
- DIY戦略は、物流コストの削減の観点からも効果的である。この根底には、創業時のフラットパックによる輸送コスト削減のアイデアがある。
- 顧客体験の向上
- 家具の組み立てを実際に体験できるイベントを店内で開催し、これにより顧客の購入意欲を高める。
- 店舗をエンタメ空間としてとらえ、店舗内にレストランを設けるなどして消費者に楽しい時間を提供する。
「企業SWOT分析例で学ぶ、IKEAのビジネスDNA」
「より快適な毎日を、より多くの方々に」というミッションに基づき、日本市場における「脅威」への対処として、ライフスタイルの提案という強固な差別化戦略を取ることで日本の市場を制した。
コメダ喫茶店のSWOT分析の例
日本の喫茶店業界は数多くのブランドやスタイルで競合しています。
その中でコメダ喫茶店がどのように差別化と成功を実現してきたのか、SWOT分析を通じて見ていきましょう。これを参考例としてお役立てください。
コメダ喫茶店のSWOT分析
A、内部環境分析 | |
強み | ・顧客ニーズを探る姿勢 ・さまざまな店舗形態での豊富な経験 |
弱み | ・一部の新業態が長期的に成功しない |
B、外部環境分析 | |
機会 | ・街中のゆったりと居座れる空間(ちょっと贅沢なくつろぎ場所) |
脅威 | ・喫茶業界の厳しい競合、消費者の変化する嗜好 |
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行いました。
その結果から、以下のような積極化戦略が導かれます。
コメダ喫茶店のクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略) | ・ちょっと贅沢なくつろぎ場所の提供 ・地域密着型の店舗展開 ・オリジナル商品の強化 |
強み×脅威(差別化戦略) | ・顧客ニーズを掴むためのマーケティング ・実験店舗の展開を進めることで新たな「機会」を掴む |
強み×機会(積極化戦略)
コメダの積極化戦略を、その重要性でランキング形式にしました。
- 「ちょっと贅沢なくつろぎ場所」という位置づけにより、街行く人々に、気を使わないで入れる快適なリビング空間を提供しています。
ちょっと贅沢なくつろぎ場所の提供
具体的な「脅威」である競合のスターバックス(第3の場所の提供)とは異なる方向で、しっかり棲み分けています。
例えば、スターバックスに入る際、少し身構えてしまいますが、コメダ喫茶店ではそのような感じは受けません。「気を遣わない、ゆったりとした居心地の良さ」がコメダの魅力ではないでしょうか。
これはおうちコメダの流れに通もじます。「おうちコメダ」とは、コメダ特製のソファやテーブルで自宅をコメダのような“心にもっとくつろぎ”を与えてくれる場所にしてしまおうというものです。
スターバックスでは、コーヒーカップやコーヒーそのもの以外に、そのような流れが起きないことから、コメダの取り組む市場セグメントがコーヒーのみの提供にとどまらない、ユニークなものであることが理解できます。
この戦略は、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の向上という世界的なトレンドにもマッチしています。
- 強みであるさまざまな店舗形態の経験を活かし、地域社会との連携を深めた店舗展開を実施。競合との差別化に成功しました。
地域密着型の店舗展開
- 自社だけの独自メニューによって、他店との差別化を図る。例えば、コメダのシロノワールなど、他店では味わえないオリジナルメニューを提供。これによって、他の喫茶店との競合から一歩抜け出すことができました。
オリジナル商品の強化
強み×脅威(差別化戦略)
コメダは、競合の多い市場環境(脅威)の中で、新しい「機会」をつかむために実験店舗の展開を積極的に進めています。
実はこの「差別化戦略」こそがコメダが急成長を遂げる礎となりました。
「企業SWOT分析例で学ぶ、コメダ喫茶店のビジネスDNA」
「ちょっと贅沢なくつろぎ場所」という個の体験を軸にしたニーズに気づき、それをミッションとして掲げ、成功を収めた。(カスタマーエクスペリエンスの充足といったコアなビジネスDNAを持つ)
QBハウスのSWOT分析の例(理髪店)
QBハウスは、10分1,000円で都市部の忙しい人々をターゲットにしたカット専門店です。
都市部の駅前を中心とした立地で、10分1,000円という手軽かつ効率的なカットサービスを提供しており、理髪業界の中で独自の戦略を築いています。
その成功の背景にはどのような要因が関係しているのでしょうか。
以下、そのSWOT分析の詳細をご紹介します。参考までに、これは一例として挙げています。
内部環境分析
強み
- 時間効率
10分という短時間でのカットが可能。 - 価格競争力
1,000円というリーズナブルな価格設定。 - サービス特化
シャンプーやブロー等の余分なサービスを排除し、カットに特化。 - 運用効率
待ち時間の少なさや迅速なサービスによる高い顧客の回転率。
弱み
- サービス範囲
カット専門のため、他の美容サービスを求める顧客には応えられない。 - 変動の少なさ
サービスメニューの数が少ない。
外部環境分析
機会
- ニーズの高まり
忙しい都市生活者の中で、短時間でのサービスを求めるニーズが増加。 - 立地
都市部の交通の要所やオフィス街に店舗を展開することで、アクセスの良さを強みとして活用。(立地としてのチャンス)
脅威
- 競合の増加
同じようなビジネスモデルを採用する競合店の出現。 - 技術進化
自宅での美容ケア技術の進化や、新しい美容サービスの提供。
QBハウスのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
都市部のさらなる要所や新しいエリアに店舗展開を積極的に進める。
ターゲット層をさらに絞り込み、特化したプロモーションやマーケティング戦略を採用。
強み×脅威(差別化戦略)
競合との差別化を図るための新しいサービスやメニューの提供。
ブランド力の強化や顧客ロイヤルティの向上を図るプログラムの導入。
「企業SWOT分析例で学ぶ、QBハウスのビジネスDNA」
「時間創出企業」というミッションに基づき、都市生活者の時短ニーズを的確に捉え、カットにサービスを特化することで、成功を収めた。
男前豆腐店のSWOT分析例
男前豆腐店は、豆腐の既存のイメージを一新する革新的なアイデアで、新風を吹き込みました。その秘訣を知るためにSWOT分析を行いましたので、参考事例としてご紹介します。
内部環境分析
強み
- 豆腐の再定義
「水も滴るいい豆腐」という発想でプリンのような食感を持たせた製品を開発。 - ユニークなパッケージデザイン
豆腐のパッケージに独自の工夫を凝らしている。
弱み
- リソースの減少
味の開発とデザイン・ネーミングのバランスが取れない場合は、商品のタイミングを逃してしまう。
外部環境分析
機会
- 健康志向の増加
若い世代を中心に健康やダイエットに対する関心が高まっている。 - 戦略変更がしやすい食材
豆腐はすぐに消費されるため、短期間での試行錯誤に適している。
脅威
- 豆腐市場の縮小
事業者数の減少。(豆腐を食べる人の減少) - 豆腐の固定概念
一般的に「豆腐はごく普通にあるもの」という固定観念。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行いました。その結果から、
以下のような積極化戦略が導かれます。
男前豆腐店のクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- ユニークなパッケージデザインとその食感で、健康やダイエットに対する関心が高まっている若い世代を獲得する。
強み×脅威(差別化戦略)
- 「体によいものは、外見や味がイマイチでも仕方がない」という固定観念を覆す。
「企業SWOT分析例で学ぶ、男前豆腐店のビジネスDNA」
伝統的な豆腐の価値を再定義(リフレーム)し、若い世代の中でのヘルシー志向の増加という外部の機会を捉えることで、成功を収めた。
ラーメン山岡家のSWOT分析の例
コロナの厳しい時期にも、山岡家が安定した売上を維持していた理由を明らかにするために、SWOT分析を実施しました。その結果を以下に示します。あくまで一つの例として、ご覧ください。
内部環境分析
強み
- ターゲットマッチ
肉体労働者に好まれる味。 - 一貫性
全国の直営店舗と、店内での調理体制で高い品質。 - アクセス利便性
24時間営業と大型車対応の広々とした駐車場。
弱み
- 味のクセ
独特のスープが好き嫌いを生む。 - 都市戦略
都市部への出店展開に課題が存在。
外部環境分析
機会
- 立地
主要道路沿いに位置し、多くのトラックドライバーが通行。 - 法律
トラック運転手の定められた長時間の休憩要件。
- 顧客
熱心なファン「俺たちの山岡家」の存在。
脅威
- 経済動向
好景気の影響での労働力不足と賃金の上昇。 - サプライチェーン
原材料やエネルギーのコスト増加。 - 競合状況
多様な業界からの飲食業界への新規参入による競争の激化。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行いました。
その結果から、以下のような戦略が導かれます。
ラーメン山岡家のクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
・大型車の通行が多い主要道路に位置する店舗展開。
・従業員が客へのサービスに集中できる店内環境作り。
・顧客の快適な利用を促す施設やサービスの提供。(24時間営業、シャワー室など)
・「俺たちの山岡家」という強固なファン層の存在と活用。(口コミやSNSなど)
このような分析の結果から、ラーメン山岡家は、SWOT分析を通じて、独自の強みと機会をうまく活用していることがわかります。
都市部での展開には課題も残りますが、熱心なファンの存在により、これからも市場での存在感を強めていくことが期待されます。
「企業SWOT分析例で学ぶ、ラーメン山岡家のビジネスDNA」
「食を通じて人と地域社会をつなぐ」というミッションのもと、特定ターゲットへの深いマッチングと独自のサービス展開を核とするビジネスDNAを持つことで、成功を収めた。
ピーターパンのSWOT分析の例(パン屋)
千葉のパン屋さん「ピーターパン」は、厳しい競争市場の中で独自の戦略を駆使して成功を収めています。この独自のアプローチを、SWOT分析を通して詳しく探りました。
これは単なる例ですが、参考にしてください。
内部環境分析
強み
- 独自の価値提供
毎日の暮らしに、「ちょっと贅沢、ちょっとおしゃれな食文化」。 - 店内体験販売
パンが焼き上がる製造過程を見ることができる。 - 店舗の演出
ログハウス風のおしゃれな店舗デザインによるブランドイメージ。
弱み
- 一部の店舗の狭さと混雑
駅ナカなどの店舗が狭く、混雑しやすい環境。 - オペレーションの遅さ
混雑時の効率的な対応の欠如。スタッフトレーニングや指導の不足。
外部環境分析
機会
- 地域性(千葉都市部)
便利な生活施設と自然とのバランスがよく暮らしやすい。
脅威
- 競争の激化
パン屋業界の競争が激しいため、他店との差別化を常に追求し続ける必要がある。 - 変動する消費者のニーズ
消費者のニーズやライフスタイルが変わることで、現在の独自戦略が通用しづらくなる可能性もある。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が導かれました。
ピーターパンのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
地域性の活用
-
- 利便性がよい暮らしやすい地域に出店(千葉都市部)
千葉の快適な生活環境「ちょっと贅沢、ちょっとおしゃれな食文化」を店舗デザインと商品で演出する。
-
- 地域に根ざした戦略を取る
地域の文化やイベントを活用し、ピーターパンの提案するライフスタイルに共感を呼び起こすコミュニティを構築する。
強み×脅威(差別化戦略)
顧客体験の向上
店内体験販売でのパンが焼き上がる製造過程を見ることができるなど、消費者に新しい食体験を提供する。
ブランドコラボ
千葉の他の地域ブランドや観光スポットとのコラボを考え、ログハウス風の店舗デザインを活かした特別な商品やイベントを企画する。
ピーターパンは、千葉都市部の魅力を「機会」としてとらた独自の戦略を展開していることがSWOT分析から伺えます。
競争が激しい業界の中での持続的な成長のために、現状の弱点を克服し、更なる顧客体験の向上を図るべく、進化を続けることでしょう。
「企業SWOT分析例で学ぶ、ピーターパンのビジネスDNA」
千葉都市部の生活文化を深く理解し、その地域性を最大の「機会」として取り入れることで独自性を築いている。ビジネスDNAは、「地域の魅力を活かした贅沢でおしゃれな食文化の提供」である。
フタバフルーツのSWOT分析の例(青果店)
「フタバフルーツ」は、東京都中野の商店街で、長年にわたり地域の人々に愛されてきた青果店です。
ただの青果店ではなく、従来の青果店から一歩進んで、フルーツをアートとして捉えることで注目を集めました。この独自のアプローチの秘訣を、SWOT分析で掘り下げます。参考事例としてご紹介します。
内部環境分析
強み
- 80年以上の歴史と経験を持つ青果店としての地域の信頼。
- 多種多様なフルーツを使用し、青果店としての専門知識を活かした魅力的な演出。
弱み
- 古くからある街角の青果店。
- 限られた経営リソース。
外部環境分析
機会
- イベントや結婚式などの特別な場面でのケータリング。
- 伝統的な「イベントの食」の枠にとらわれない、新鮮な魅力を求める声。
脅威
- 他のケータリング会社や青果店との競争。
- 似たようなアイデアを取り入れた新規参入企業の出現。
- フルーツや野菜の価格の変動によるコストの不確定性。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
フタバフルーツのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- 戦略1
80年の歴史を持つ青果店として、イベントなどでのケータリングサービスを展開する。地域での実績と歴史を強みに、顧客からの信頼を深める。 - 戦略2
多彩なフルーツを組み合わせ、専門知識を活かした魅力的な演出で、伝統的な「イベントの食」の枠にとらわれない新たな楽しさをを提供する。
特に、フルーツをアート作品のように演出することで、他のケータリングとは違うサービスを提供する。
強み×脅威(差別化戦略)
- 戦略3
さまざまなフルーツに関する知識を駆使して、価格の変動に合わせてメニューをを変更する。
これにより、品質を維持し、価格の大きな変動を抑えることで顧客に安定した価格とサービスを提供する。
フタバフルーツは、「十人十色の作品(果実)をより沢山の方々に届ける」というミッションを掲げています。
果物をアート作品として取り扱うことで独自性を生むユニークなビジネスモデルです。
このような革新的な取り組みは、他の伝統的な企業や業界が学ぶべき貴重なモデルと言えます。
「企業SWOT分析例で学ぶ、フタバフルーツのビジネスDNA」
ビジネスDNAは、「果物の価値を再評価、日常や特別な場面での楽しみ方の革新」。果物の持つ自然の美しさの魅力をアートとして捉え、顧客に独特の体験を提供することで、成功を収めた。
『孤独のグルメ』のSWOT分析の例(TV番組)
『孤独のグルメ』は、主人公が様々な飲食店で食事を楽しむ様子を描いたテレビ番組です。この番組の人気の背景を、視聴者の観点からSWOT分析を行いました。その結果、ビジネスの大切な示唆を得ることができました。以下で、その分析の詳細を紹介します。
ご紹介する内容は、あくまでも参考例としてご覧ください。
内部環境分析
強み
- 共感性
主人公の日常の中の小さな喜びや美味しさに共感して体験することができる。 - 独自性
一人での食事という独自の視点での食体験は他の番組にはない。(極めて個人的な体験) - リアル感
実際の飲食店を訪れて撮影しているため、視聴者が実際にその場所を訪れることができる。 - シンプルさ
複雑なストーリーやドラマ要素が少ないため、食の楽しみに集中できる。
弱み
- 変化の少なさ
同じパターンのストーリー展開であるため、一部の視聴者には物足りなく感じられるかもしれない。 - 限定的なターゲット
一人での食事や、食に対するこだわりを持つ人に特化しているため、幅広い層にはアピールしづらいかもしれない。
外部環境分析
機会
- 意識の動向
「個々の楽しみ方や価値観を尊重する」視聴者の新たな意識の流れ
脅威
- 模倣される
このような独特のフォーマットは、他の番組やメディアに模倣されるリスクがある。 - 飽和する
類似の食に関する番組やコンテンツが増える中で、差別化が難しくなる可能性がある。 - 変化の速さ
視聴者のニーズや嗜好が変わる中で、番組のフォーマットやコンセプトのアップデートが求められることがある。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
『孤独のグルメ』のクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- 共感と独自性のカスタマイゼーション
主人公の日常の中の小さな喜びや美味しさに共感する視聴者層の好みを詳しく調べ、その好みに合わせた特別番組や、特定の飲食店との共同企画を検討する。
強み×脅威(差別化戦略)
- 独自性と模倣の回避
一人での食事というユニークな点をさらにアピールする。例えば、一人での食事の背後にある気持ちや背景を詳しく取り上げることで、他の似た番組と違った特色を出す。 - シンプルさを活かしたアップデート
番組はシンプルで、複雑なストーリーが少ないが、そのままのシンプルさを保ちながら、視聴者のニーズに応じてすこしづつ内容を調整する。
『孤独のグルメ』のSWOT分析を通じて浮かび上がってきたのは、人々が「周りに合わせる」のではなく「自分らしさ」を重んじる時代が訪れているということです。
この流れは顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)に通じるものがあります。
現代の消費者行動や市場のトレンドは、個人の趣味や価値観に合わせた「個別化」や「カスタマイゼーション」が進んでいると言えます。
「企業SWOT分析例で学ぶ、『孤独のグルメ』のビジネスDNA」
『孤独のグルメ』は、「個」の価値を最大限に活かす番組作りで成功を収めた。企業にとって顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を中心に据えた戦略の重要性を示唆している。
スノーピークのSWOT分析の例(アウトドア)
スノーピークは、高品質なキャンプ用品で有名で、アウトドア愛好者から高い評価を得ています。
そして、成功の要因は、創業理念と優秀な人材にあると考えられます。
そこで、「今後アウトドアが流行る」との前提に立ち戻り、それを「機会」としてSWOT分析を試みました。
スノーピークがどのように自社の「使命と価値観」を「強み」として、アウトドアの人気上昇という「機会」を利用したのでしょうか。
あくまで参考としてですが、その秘密を探ります。
内部環境分析
強み
- 使命と価値感
「人生に、野遊びを。」をテーマに、人間性の回復を目指す。
スノーピーク自身もユーザーとして製品を使用し、そのフィードバックを基に品質とデザイン性を高める。 - 地域性の利点
世界に名高いものづくりの町で生まれ、その地域の強みを生かす。 - 人材の資質
社員一人ひとりがキャンプを通じ人と人、人と自然をつなぐ仕事に情熱を注ぐ。
弱み
- 価格帯
高品質な製品を提供するため、他のブランドに比べて価格が高めとなっている。 - 市場の限定性
主にアウトドア愛好者やキャンプを楽しむ層に特化している。 - サプライチェーンの弱さ
キャンプシーズンが近づくと、人気商品の在庫が足りなくなることがある。
外部環境分析
機会
- 今後アウトドアの人気が高まる
キャンプやアウトドア活動人口の増加が見込まれる。
脅威
- 競合の増加
アウトドアブームを背景に、多くの新ブランドや製品が市場に登場してくる。 - 市場の飽和
キャンプやアウトドアのブームが一過性である場合、市場の縮小が懸念される。(現在、このような兆候が見られます)。 - 環境問題
アウトドア活動が自然環境に与える影響に対する懸念が高まる中、サステナブル(SDGs)な製品やビジネスモデルの必要性が増してくる。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
スノーピークのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- 使命と価値 x アウトドア人気の上昇
- ユーザー視点での品質改善
自らもユーザーとして製品を使用し、そのフィードバックを基に品質とデザインを高める。 - 顧客ニーズを深堀した製品
「人生に、野遊びを。」という使命の元、顧客のニーズに即した製品を開発する。
- ユーザー視点での品質改善
- 地域性の利点 x キャンプ人口の増加
- 「ものづくりの町」の高品質な製品
世界的に知られる「ものづくりの町」である利点を生かし、耐久性や機能性などを重視した高品質なキャンプ用品を作る。
- 「ものづくりの町」の高品質な製品
- 人材の資質 x アウトドアの人気上昇
- 顧客体験の向上
スタッフは、顧客が持つマニアックな疑問にも親切・丁寧に応じる。これにより、スノーピークを選ぶ理由を一層強める。 - 疑似体験の提供
店舗内でテント設営講習など、実際のキャンプ体験に近い疑似体験を提供する。これにより、顧客の満足度とリピート購入率を上げる。
- 顧客体験の向上
強み×脅威(差別化戦略)
- 使命と価値 x 競合の増加
- 競合企業が増えても、スノーピークの高品質と独自の価値は顧客に評価され、選ばれる可能性が高い。
- 人材の資質 x 環境問題
- スタッフが持つ「人と自然をつなぐ」情熱は、環境に優しい製品を作る上で大きな役割を果たす。(実際、彼らが焚火台を開発したことで、そのような製品が広まりました)。
スノーピークは「使命と価値観」を大事にしています。
SWOT分析の結果、アウトドアが人気になると、顧客に対するその姿勢が評価され、ブランドとしての地位が上がることがわかりました。
今後もスノーピークは、「強みと機会」、そして「強みと脅威」を上手く組み合わせることで、積極的かつ差別化された戦略で成長を遂げていくでしょう。
「企業SWOT分析例で学ぶ、スノーピークのビジネスDNA」
「人生に、野遊びを。」をミッションに据えたビジネスDNA持つ。顧客ニーズを深堀り、カスタマーエクスペリエンスを向上させ、独自のブランド価値を築くことで、成功を収めた。
寺子屋のSWOT分析の例(土産物メーカー)
寺子屋は、日本の伝統文化と匠の技術をベースにしながら、多彩なコンセプトショップと製品で、観光地を中心にした土産物販売で売り上げを伸ばしています。
小さな京都のショップから始まり、「旅の思い出、和の心で彩る」をテーマに、お土産物の業界に革新をもたらしている寺子屋。
「和」を主題にしたオリジナル商品やキャラクターショップで国内140店舗、年間500万人のお客様に利用されています。
寺子屋がどうして成功しているのかをSWOT分析で探ります。
以下の事例は、参考としてお役立てください。
内部環境分析
強み
- 経営理念
お客様の楽しい思い出作りと満足度を最優先。日本の伝統文化を尊重し、地域活性化に貢献。 - 事業モデルと優位性
時代のニーズに合った高品位な土産物。自社で企画、製造、販売を一貫して行う。 - 店舗運営とスタッフの姿勢
お客様目線に立つ店舗運営。自ら挑戦する意欲を持つ人材。
弱み
- 限定的なターゲット層
主に観光客に焦点を当てているため、その地域の季節や観光業の変動に影響を受けやすい。 - コンセプト重視の限界
多種類のコンセプトショップがあるものの、新しいコンセプトを次々と生み出す必要がある。
外部環境分析
機会
- 観光業の成長
日本国内外からの観光需要が高まる。インバウンド市場も好調である。 - 地域活性化
地方自治体や他企業との連携により、新たなビジネスチャンスが広がる。地域の特色を活かした製品が求められている。 - キャラクターの人気
キャラクター商品が多くの人々から愛され、ブランド力が増している。 - デジタルマーケティング
オンライン販売を通じて新たな市場を開拓できる。
脅威
- 競合他社の増加
同じ市場で競争する新規企業や大手企業の参入。 - 多様化する消費者ニーズ
ターゲットとする観光客のニーズが多様化し、購買行動が多様化している。高度なマーケティング戦略が必要。 - 季節性の影響
その土地の観光が季節により影響を受ける不安定性。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
寺子屋のクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- キャラクターと「和」文化のシナジー(伝統的なお土産の再定義)
よく知られているキャラクターを使用することで、旅行の体験を豊かにしながら企業の信頼性と認知度を確実に高める。
- スヌーピー、りらっくま、ミッフィーなどを用いて、旅の思い出をもっと楽しいものにする。
- 季節限定の商品やフードメニューを展開して、短期間で高い売上を上げる。
- キャラクターの生誕祭や記念日に合わせたイベントやキャンペーンを展開する。
- キャラクターグッズは日本人だけでなく外国人にも人気。特に外国人観光客に対して、オンラインでの購入を容易にするなど。
- 地域とのコラボレーション
- 「和」の魅力とキャラクターの活用で観光地を元気にする。
- 地域の伝統産品や食品メーカーと連携して、独自かつユニークなコラボレーション商品を展開する。
強み×脅威(差別化戦略)
-
- 顧客体験の向上
- 顧客目線のサービスを自主的に提供できるスタッフを育む。例:スタッフがキャラクターに扮して写真撮影など。
- SNSでシェアされやすいような店舗デザイン。体験型店舗にする。
- 全国展開
- 顧客体験の向上
北海道から九州まで、全国で店舗を展開することで季節変動が少なくし、売上を安定させる。
弱み×機会(改善戦略)
- オンライン戦略の強化
オンラインマーケティングとマルチチャネル販売(店舗とオンライン)を一体化させ、観光シーズンや地域依存から脱却するための安定した販路を確立する。
この戦略には、バーチャル店舗ツアーを含めたデジタルエクスペリエンスも含まれる。 - 多言語・多通貨オンラインプラットフォーム
オンライン販売を多言語・多通貨に対応させることで、観光客だけでなく、より広範な外国人顧客もターゲットにする。
SWOT分析により、寺子屋の成功の秘訣は、人気キャラクターを使って日本の「和」を新しく表現し、新規の顧客を惹きつけたことにあると分かります。
今後も寺子屋は、地域とのパートナーシップを一層強化し、オンライン戦略を推進することで、お客様の多様なニーズに応えていくことが期待されます。
「企業SWOT分析例で学ぶ、のビジネスDNA」
「旅の思い出、和の心で彩る」がビジネスDNA。「和」の伝統と人気キャラクターのシナジー効果で、観光地での体験価値(カスタマーエクスペリエンス)を向上させる戦略を取り入れることで、成功を収めた。
モノタロウのSWOT分析の例(間接資材通販)
モノタロウは、ITの力で専門業者向けに、間接資材をオンラインで安く手間をかけずに購入できるサービスを提供しています。
具体的には、検索機能の充実により、間接資材の選択や見積もり、発注プロセスを効率化し、現場での作業時間の削減をサポートしています。
このアイデアの背後には、間接資材購入の煩雑さや、不透明さを解決する目的がありました。
現在、この取り組みは、広く受け入れられ、多くの一般の人々もモノタロウを利用しています。
そこで、この企業の創業当時(2000年頃)まで立ち戻り、SWOT分析を実施することで、その成功の秘訣を探りました。
あくまでも例としてご参考にしてください。
内部環境分析(当時)
強み
- 「間接資材調達ネットワークの革新」という明確なミッションの存在。
- アメリカの大手間接資材カタログ販売業者、グレンジャー社との提携。
- 住友商事で立ち上げたビジネスであるためリソースに余裕がある。
弱み
- 取扱商品点数が30万点と少ない。
- 在庫なしのビジネスモデルであるため配送に手間取る。
外部環境分析(当時)
機会
- 企業にとって、間接資材の調達は手間も時間もかかる。(種類の多さ、価格のばらつき、見積もりの必要など)
- 顧客は価格より購入のしやすさを重視する。
- オンラインで物が買えるようになり、キーワード広告が誕生する。
脅威
- 業界内での認知不足や受け入れられない状況。(商談ゼロ、価格固定でモノが売れるわけがない)
- 顧客の混乱を招く情報量の多い紙カタログ。(または、弱み)
- 当初のシステムは回線が遅く、データベースや検索性能も低い。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
モノタロウのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- インターネットで、全てをワンストップで購入できるようにし、一律の価格に設定する。(接資材調達ネットワークの革新)
- 公平にネットで価格や機能を公開する
- 中小企業の小口購入でも、価格は均一で公平
- 顧客企業の『コストの節約』と『時間の節約』を図る
- 購入の手間を大幅に省けるようにする
- 間接資材の調達ネットワークの構築に、グレンジャー社のノウハウを活かす。
- キーワード広告でオンラインによる集客を行う。
強み×脅威(差別化戦略)
- カタログ販売という従来の方式を止め、中小企業向けにチラシをDMで送り、FAXで受注する方法に変える。
- 取扱商品点数を増やす。
- マーケティングにコストをかけ売れ筋商品を把握する。
モノタロウの成功の核心には「資材調達ネットワークの変革」という明確なミッションが存在します。
このミッションは、詳細な市場調査とモノタロウの前身である住友商事での体験、そして小規模なテストを経て、業者のニーズを捉えることにより生まれました。
この顧客の問題を解決するというアプローチは、後に一般のユーザーにも受け入れられ、広い支持を獲得する大きな要因となりました。
「企業SWOT分析例で学ぶ、モノタロウのビジネスDNA」
「資材調達ネットワークの変革」がビジネスDNA。顧客の煩雑な調達プロセスをシンプルにするというニーズに焦点を当て、それを解決するサービスを提供することで、成功を収めた。
@コスメ ストアのSWOT分析の例(コスメ美容)
@コスメ ストアは、日本最大級のコスメ・美容サイト@cosmeが運営するショップです。
オンラインでの実績をもとにリアル店舗を展開し、顧客体験を重視。これにより「化粧品との出会いを通じた、新しい楽しさの体験」をテーマとしたショッピング空間を提供しています。
実店舗をオープンする前の状況を前提として、カスタマーエクスペリエンスの視点からSWOT分析を行いました。あくまで一つの例として、ご覧ください。
内部環境分析
強み
- カスタマーエクスペリエンスを核にしたミッション
「化粧品との出会いを通じて、新しい楽しさを体験してもらう」。 - コスメ美容界での圧倒的な知名度
@コスメは業界内での名高いソーシャルサイト。 - 豊富な会員ベース
680万人以上の会員がおり、多様なマーケティング戦略でテストが可能。
弱み
- リアル店舗経験の欠如
実際のお店を展開した実績やノウハウがまだ育っていない。 - 物流の複雑さ(※推測)
実店舗とオンラインストアの在庫管理や商品の配送が複雑になる。 - 高い運営コスト(※推測)
リアル店舗の運営コストは、オンラインサイトのみと比較して高くなる。
外部環境分析
機会
- カスタマーエクスペリエンスのトレンドが上昇している
- 消費者の探求
新しい商品やトレンドに対する関心が強い。 - 商品の体験ニーズ
顧客は商品を実際に試すことを強く求めている。 - 商品の多様性
高級ブランドから手頃な商品まで、幅広く楽しみたい。
- 消費者の探求
脅威
- 競合他社の存在
同じようなコンセプトの店舗や、類似のサービスを提供する企業との競合が考えられる。 - 変化する消費者の嗜好
消費者の化粧品に対する好みやトレンドは頻繁に変わる。新しいトレンドに適応しきれない場合、顧客を失う可能性がある。 - オンラインとオフラインの統合
オンラインとリアル店舗の間のシームレスな体験を提供することの難しさ。
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
@コスメ ストアのクロスSWOT分析例
強み×機会(積極化戦略)
- 知名度活用
圧倒的なコスメ美容界の知名度を利用し、「化粧品の探索と出会いの楽しさ」を強調したサービスを提供。 - 豊富な会員ベースの活用
680万人以上の会員に向け、独自のプロモーションやキャンペーンを展開し、顧客体験の向上を目指す。 - 店舗デザインと商品展示の工夫
テーマパークのような楽しい空間作り。
高級ブランドと手頃な価格の商品を一緒に展示。
顧客が試すためのテスターを提供。 - 接客と研修の方針
積極的な接客を控え、顧客が自由に店内を回れるような環境を整える。
スタッフには定期的な研修を提供し、多様なブランドの特色や提案方法を教育。
@コスメ ストアは、オンラインでの成功を背景に、リアル店舗での新しい顧客体験を提供しています。
顧客が商品を直接手に取り、実感してもらうことで、更なるブランドの魅力を伝えることもできます。
商品を直接試す喜びや、店内の雰囲気は、ブランドのさらなる強化につながります。
オンラインから得られる情報と実店舗での体験を融合させることは、他の業種においても大きなヒントになるかもしれません。
「企業SWOT分析例で学ぶ、@コスメ ストアのビジネスDNA」
強力なブランド知名度と、「化粧品の探索と出会いの楽しさを追求する」ビジネスDNAで、顧客に新しい楽しさの体験を持たせることで、成功を収めた。
ワークマンのSWOT分析
ワークマンは、もともと職人向けの作業服を提供していたブランドですが、近年の市場の変化を受けて、一般消費者向けにも展開を広げてきました。
しかし、最近ではその勢いが減退。長く営業している「既存店」の売上は振るわない状態です。
この背景には、職人客の減少や一般向け商品の強化が影響していると考えられます。
そこで、ワークマンが現状に立ち向かうための新しい戦略を考えるために、SWOT分析を実施しました。
内部環境分析
強み
- 職人向けに特化した高品質で機能的な商品ラインアップ
- 「働く人のための便利さ」を追求するブランドイメージ
- 実績のある商品開発力とデザイン能力
- 一般消費者向けと職人向けの2つの市場へのアプローチが可能
弱み
- 既存店の売上が振るわない現状
- 職人客と一般客のニーズのバランス取りが難しい
- 一般消費者向けの拡大がブランドのコアメッセージのぶれを引き起こす可能性
- 駐車場スペースの問題
外部環境分析
機会
- 職人の年齢層による市場のニーズ変化
- 一般消費者向けの市場のさらなる拡大
- 一般消費者が求める新しい体験やサービスのニーズ
- ホームセンターや他の競合が提供しきれないニーズの存在
脅威
- 職人の数の減少や市場の先細り
- 他の競合ブランドやホームセンターなどから競争強化。(「プロショップ」や「コーナンPRO」等)
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
ワークマンのクロスSWOT分析
強み×機会(積極化戦略)
- 一般消費者への体験型サービスの拡大
「働く人のための便利さ」のブランドイメージを生かして、一般消費者向けの顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)向上のためのイベントやプロモーションを展開する。
例えば、
- 体験コーナーの設置
- 職人による実演イベント
- ワークショップの開催など
- 職人のニーズ変化に応える
職人向けの特化した高品質で機能的な商品と、職人の年齢層による市場のニーズ変化をマッチさせることで、新しい商品やサービスを開発する。
強み×脅威(差別化戦略)
- ニーズ深掘りによる競合差別化
職人の減少という課題をチャンスと捉え、その深いニーズに焦点を当ててブランドの魅力を強化し、競合との差をつけることで一般消費者の信頼を獲得する。
「ニーズ深掘りによる競合差別化」は、職人の減少をチャンスとしてとらえ、深いニーズに焦点を当てることで競合と差別化し、ブランドの信頼性を向上させる戦略です。
SWOT分析の中での「脅威」を単なるネガティブな要因として捉えるのではなく、それを「機会」に変える独自の視点やアプローチは、ビジネスの競争力を高める鍵となります。
特に小さな企業は、大手企業とは異なる柔軟性やスピード感を持っているため、「脅威」を迅速に「機会」に変えることが可能です。
このような積極的な姿勢は、他社との差別化を図る上で強力な武器となるでしょう。
コンビニのSWOT分析(高齢者が多い地域)
高齢者の集まる地域で、長らく営業している個人商店が新たに独立系のコンビニ事業を開始する想定で、SWOT分析を行いました。
既存の大手チェーンが競合となる環境で、どのような戦略が有効でしょうか。
内部環境分析
強み
- 地元での強いコミュニティとの繋がり
- 地域に密着したサービスの提供
- 高齢者向けの商品の提供
- 高齢者向けイベントや講習会(健康相談など)
弱み
- 高齢者特有のニーズに対応する必要(広い駐車場、段差のない店内など)
- テクノロジーの導入が難しい(自動決済など)
- ブランド力が低い、資金力が限られる
外部環境分析
機会
- 高齢者の増加によるニーズの拡大
- 地域の団体や施設(デイサービスなど)
- 地域の高齢者が頻繁に訪れる場所(公園、集会所など)
脅威
- 大手チェーンやドラッグストアとの競合(価格競争など)
- オフピーク時間帯の存在(夜間の売上が低い可能性)
- オンラインショッピングや宅配サービスの拡大
- 将来的な高齢者人口の減少(過疎化)
次に上記のSWOT分析から、クロスSWOT分析を行います。
その結果から、以下のような戦略が考えられました。
独立系コンビニのクロスSWOT分析
強み×機会(積極化戦略)
- 地域密着型サービスの提供
- 店内談話室、健康相談などを開催。
- 高齢者が頻繁に訪れる場所(公園、集会所など)でのポップアップストアや販促活動、移動販売車活用。
- 資金力に依存しない地域密着型のプロモーションや地域の祭りやイベントへの協賛・参加。
- パーソナルサービスに力を入れる
- 商品選びから購入までの手続きを店員が個別にサポートする。
- 高齢者宅への無料配達サービスの提供。(同時に安否確認)
- 高齢者施設との連携強化
- 高齢者施設(デイサービスや老人ホーム)に特化した商品を提供。同時に、特別割引やパッケージも展開する。
- 高齢者施設や団体と連携し、訪問型レクリエーションを開催。
高齢者と一言で言っても、実際にはその要望やニーズはさまざまです。
ここでは、特に注目すべき3つのタイプを紹介します。
- 活力を求める高齢者
アウトドアや旅行に興味があるため、直接店舗に足を運ぶことが少ない。 - 家族と一緒に暮らす高齢者
家族が買い物を代わりにすることが多く、自ら店に出向く機会が少ない。 - 健康志向の高齢者
健康食品や運動に特化した店舗に魅力を感じる傾向がある。
ただ、これら全てのニーズに応える必要はありません。逆に広く浅くの対応では、他店に流れる可能性があります。
そのため、特定のターゲット、例えば「活力を求める高齢者」であれば、そこに焦点を絞り、深くそのニーズに応えることが必要です。
このようにすることで、特定の顧客層からの信頼を深めることができ、結果的に他のターゲット層からも信頼を獲得できます。
特に高齢者が多い地域では、そのニーズに特化したサービスが大きな差別化となり、新しい顧客の獲得に繋がります。
これは、地域内で「高齢者フレンドリーなコンビニ」としての地位を確立し、地域ナンバーワンを目指す戦略です。
そして、その実現のためには、例えば「一人ひとりに寄り添う、快適な暮らし、手の届く場所に。」というミッションを掲げ、それを日々のサービスで実現していくことが重要です。
これらの戦略を実行するには、更にSWOT分析を詳細に行い、戦術としての具体性を持たせる必要があります。